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ベストセラー「99.9%は仮説-思い込みで判断しないための考え方」の紹介

現代思想の分野で、特にフーコーが、我々の持っている“常識”とやらが、歴史的に形成された“あやふやな”なものかを明らかにした。
また、精神医学の分野においても、我々が“異常”と訳へだてる“正常”というものも、いかに頼りないものかも明らかにされている。

東京大学理学部物理学科卒業で博士号を持つ科学作家である竹内薫氏によって書かれた「最近どうも頭が固くなってきたなぁ」という方へ送る本書「99.9%は仮説-思い込みで判断しないための考え方」も、そんな科学の常識も、いつひっくり返されるか分からない“仮説”に過ぎないと述べる。

99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方
99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方
竹内 薫
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99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方

99.9%としているのは、何も単なるキャッチコピーではなく、著者・竹内薫氏は、意味を込めたそうですが、僕は、仮説ではないとされる残り0.1%が何を意味するのかは分かりませんでした。
また、それは本書でも読者への宿題として残されたままです。

まず、竹内薫氏は、「飛行機はなぜ飛ぶのか?実はよくわかっていない」と読者を挑発し、科学は万能ではないことを説く。

そして、「世の中ぜんぶ仮説にすぎない!」、仮説だからこそ、ある日突然くつがえると。
それも、ある日、180度くつがえる事を統合失調者に以前行われていたロボトミー手術の治療に関連して述べています。

ロボトミー手術

それまで治療のすべがなかった統合失調症患者に、脳の前頭葉を切る1935年から1960年代まで行われていた手術の事。
そもそも、このロボトミー手術は、チンパンジーに行った結果、凶暴性がなくなったことを聞いたエガス・モニスが、すぐさま自分の患者に行ったことから始まる。今なら、「人体実験だ。」と言って大騒ぎですね。
その結果、エガス・モニスは、1949年にノーベル賞まで受賞してしまいます。
その非人的行為はアカデミー賞を獲得した「カッコーの巣の上で」で告発されています。

そして、『地動説』を唱えたガリレオ・ガリレイの自分が作った望遠鏡にまつわる逸話を取り上げ、目の前の事実を受け止めるにも、その人の主観が大きくものを言う事実を明らかにします。

そして、その事は、現代に生きるわれわれも同じであると。常識は仮説にすぎない、われわれの世界観、われわれが親から教わること、われわれが学校で教わること、すべて仮説にすぎないと、著者・竹内薫氏は言い切る。

そして、常に常識を疑う癖をつけて、頭のなかの仮説の群れを意識する人は、「頭が柔らかい」人であるとする。

そして徐々に科学の持つ本質に近づいていく。
科学の多くは、実験を行って、理論を打ち立てるという繰り返しだが、著者・竹内薫氏は、それは、「まず仮説ありき」だと述べる。
ある仮説を確かめるために、実験をすると。
そして、得られた実験データは、『裸の事実』ではなく、実験者それぞれに都合のいいように解釈する人間的な営みであると。

このことは、大学の研究室で日夜、実験に明け暮れいた僕にとっても納得できるものです。研究者は、皆、そのように実験をしています。
問題は、研究者自らが、そのこと自体をどれだけ自覚しているかという事です。
ノーベル賞を受賞した“偉大なる平凡人”田中氏は、自分の失敗した実験データから偉大な発見をなさりましたが、科学史を紐解くとしばしば、こういうことがありますが、こういうことは、簡単そうで僕を含めた“本当の平凡人”の研究者にはまねができません。

我々“本当の平凡人”の研究者は、そういう場面に遭遇すると、コンタミなど、どっかで実験方法そのものが失敗したのだと簡単に片付けてしまいます。
実験を行う際、仮説を打ち立てますが、“失敗した”と思うような実験データとまではいかなくとも、意図しないデータが得られることはまれではありません。というよりもそういう事の方が多いです。
そこで、そのデータをあれこれ考察して、どう解釈するかということに、本当に、その研究者の真価が問われるのです。

大学で科学史というものがあまり教えられないという事実を嘆き、理系に進む人には必須のバックグラウンドだという著者・竹内薫氏の意見に大賛成である。

ついでに言っとくと、「研究者」という仕事に受ける一般の方が受けるイメージは、おそらくなんだか難しいことに取り組んで本を沢山、読んでいるだろうというものでしょうが、確かに論文は、相当、読まねばなりませんが、実験は、汚いですし、肉体労働そのものです。

そして、古い仮説を倒すのは新しい仮説である事を、絶対にあると思われていた宇宙空間を満たすエーテルを例に取り、論破します。

そして、仮説を「白い仮説」「黒い仮説」「グレーな仮説」に分け、それを決めるのは、客観的な科学的事実ではなく、周囲の人々であると言い切ります。

科学哲学者カール・ポパーの「科学は、常に反証できるものである」とし、100万回実験を行って100万回理論を支持するような実験結果がでたとしても、次の100万1回目に、理論がうまくいかないことを示す精密実験データが出た時点でその理論は通用しなくなるー。
ようするに、決定的な証明などということは永遠にできないと結論づける。
結局、科学はすべて近似にすぎず、永遠に理論(仮説)は、真理になれない。

他に、現在の科学(主に物理分野)のトピックが取り上げられています。
10番目の惑星や「厳密には冥王星は小惑星の一つ」、物質の最小単位、素粒子のペンタクォークの話題。
オウム真理教じゃないけど、科学的に物事を考えることができない科学者やについても触れられ、今アメリカで物議を醸している科学論争、宇宙のどこかに知的設計者がいて、その知的設計者が例えばDNAを設計して、生物を創りだしたという「インテリジェント・デザイン説」、実験室で宇宙を創る!?、今話題の超ひも理論、一般人には頭では理解出来ても、なかなか実感することが難しい相対性理論をなるたけ平易に身近な例をとり説明しており、ちょっと難しいですが、現実と夢の世界を区別しないホーキングと実在論の関係、著者は、哲学も学んでいらっしゃるのか、少し前に哲学や精神医学で話題になった間主観性にも非常に分かりやすい説明をされています。

一応、科学分野に在籍した僕ですが、知らないことも多く、へぇ~とか思いながら読んでいました。
ただし、僕も含め理系人間の方には、少し平易すぎて物足りない部分がありますが、高校生や一般の方や文科系の方にとっては、非常に身近な例をとりながら説明されておりますので、なるほどとうなずく場面も多いのではないでしょうか。

身近なところでは、「赤ちゃんに母乳を与えるな」という仮説やマイナスイオンの効果や「忠臣蔵」のTV作品の随所に入り込んだ「黒い仮説」、今我々が常識として理解している暗黙の了解を、時代が変われば違うことを、江戸時代の地図を用いてうまく説明しており、また、「あの人とは話が通じない」科学的理由は、相手と自分とでは拠って立つところの仮説が違うからだ主張しており、これなんかは、どこぞの脳学者の訳の解らない“バカの壁”なる仮説よりも、よっぽど理にかなったうなづける話であると思われます。

本書は、章末に、ある仮説について自分なりに考えるように問題が読者に、提示されている。この問題は、問題そのものは難しくないのですが、いざ自分で答えを出そうとすると簡単には答えが出せないような難問です。

「先生も、親も、友達も、みんながそういうけど、ホントにそうなの?」と疑問に思うことの大切さ、常識、先入観、固定観念からいかに自由に物事を捉え、自由に物事を考えるかを著者・竹内薫氏は説くが、果たして読者はどこまで実践できるだろうか?

なんだか科学的に立証されているのだと言えば、もはや絶対的に揺るがされない事実であるような現代の風潮ですが、皆さんも、本書を手に取り、いかに自分の中に先入観や固定観念がはびこっているかをたしかめてみてはいかが?

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