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橋爪大三郎「永遠の吉本隆明」で吉本隆明の思想を知る

吉本隆明といえば、以前では、色んな雑誌で出ており、どんな事柄にも首を突っ込む節操のないうるさいおじさんという印象が強い。

共同幻想論」くらい読んでいますが、彼のなにも政治や社会などのいわゆる「大文字」な事柄だけでなく、大衆が関心があるものについて自由に論じ、研究課題にすべきだという思想的態度が、宮台真司のようなブルセラを本気で研究課題に取り上げ、またそれを、社会学的に非常に価値のあることだと信じて疑わないような、いわば知識人の堕落をもたらせたと僕は、考えています。

宮台真司の「終わりなき日常を生きろ」を読んだが、同じ事を繰り返し、内容のうすぺっらな本でした。
僕が以前、定期購買していた雑誌で宮台真司は、映画評を書いていたが、映画には、結構、自信があり、ブログまで持っている(シネマつれづれ日記)僕ですら、なにを言ってるのかサッパリ解りませんでした。

その訳の解らなさがいいのか、彼(宮台真司)のことを、非常に新鮮だとか高く評価する人達も、かなりの数でいましたが、僕にはサッパリ理解できません。

さて、吉本隆明であるが、彼は、僕の好きな丸山真男を激烈に批判し、全共闘の学生を擁護し、全共闘世代の永遠のアイドルでもある。

吉本隆明の思想には、“大衆の原像”というものがあり、社会に関心を持たず、意見も持たず、行動も起こさず、日々の私的生活に埋没する人々を全面的に肯定する姿勢があるが、私は、全く組しない。

それにしても、詳しくは知らないが、全共闘において一部、存在した大衆に潜り込み、自分達だけが共有している”革命的精神”なるものを大衆に広げようとする悪しきエリート意識むき出しの行動は、吉本隆明氏の思想と論理矛盾をきたさないのだろうか。
また、彼らの行動を吉本隆明氏は、どう思っているのであろうか。

確かに「共同幻想論」の投げかけたものは大きく、在野で活発に多くの著作を残しているのは尊敬に値するが、本書でも橋爪大三郎が言うような「共同幻想論」や「言語にとって美とはなにか」が、フランス構造主義と機を一にする世界同時代性があるとは、幾らなんでも褒めすぎではなかろうか。

このように評価するのは、なにも橋爪大三郎氏だけではない。

また、全共闘世代を中心に、評論家や学者にも吉本信者が数多くいるが、これは、吉本隆明氏自身も認めるところであるが、一部を除く彼らの吉本隆明への理解は、非常に浅いものである。

一番、典型的なものは遥洋子だ。一応、上野千鶴子の下で学んだらしいが、彼女が「幻想」という言葉を使う時、その言葉の持つ意味を一度でも深く考えたことがあるのだろうか。

確かに社会が高度化され、情報社会に生きる我々は、様々な幻想を事実であるとして生きている。
また、我々個人を翻って考えても、過去からつながる自分の物語という幻想を基盤に生きている。
しかし、全てが幻想であるとは思わない。我々は、確からしい実感を伴った身体的感覚を持って生きている。
幻想だけでは、生きていけないのだ。

ようは僕にとって、吉本隆明とは、熱心な信者がいるが、それをほど価値を見出せず、やかましいおじさんで、大衆に取り入るのが非常に上手い人という印象です。

最後の「大衆に取り入るのが上手い」というのは、麻原彰晃を擁護した時点で大衆と亀裂を生んだようだが、恐らく、その事によってだろうが、雑誌でもほとんど見なくなった。

永遠の吉本隆明
永遠の吉本隆明
橋爪 大三郎
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しかしながら、僕の吉本隆明への印象は、本書を読んでも変わっていません。

しかし、本書を読んだことによって、とにもかくにも彼の著作を読んでみようと思いました。

しかし、橋爪大三郎という人は、本当にどっぷりつかった近代人だなあと思ってしまう。それに他者への思いやりや想像力が全く欠如した冷たい知識人でもあるとも思う。
こういう案内書入門書を書かせると上手いが、自分が近代人であるという自覚もないもまま、フランス構造主義などの現代思想に言及するのは、読者に誤解や混乱をもたらすだけではないだろうか。

本書の最後の「<付録>吉本隆明はメディアである」に出てくる“権力”という概念は、完全に近代のものであって、ポスト構造主義が問題にしている権力という概念とは、全く異なる。

ただ、社会が言語によって成り立っているという着眼から、自身の研究分野を言語派社会学を選択したのは、ソシュールの言語学の大きな影響下から生まれたフランス構造主義の流れをくんでおり、慧眼に値するが。

最後に、本書「永遠の吉本隆明」の内容を紹介しておく。
まず、第1章「吉本隆明とはどんな思想家なのか」において、吉本隆明氏の資質や彼の思想の特質について述べる。

第2章「吉本隆明の仕事を読んでみる」において、彼の一連の著作が、その書かれた時代背景、全共闘世代を中心とした読者に与えた影響、その思想の内容、その独創性、そのバックボーンについて書かれている。

取り上げられている著作は「擬制の終焉」「共同幻想論」「言語にとって美とはなにか」「心的現象論」「マス・イメージ論」「ハイ・イメージ論」「アフリカ的段階について」。

第3章「吉本隆明はどう闘ってきたのか」において、反核運動への批判、「ロス・疑惑」「地下鉄サリン事件」において吉本隆明氏が雑誌等を中心に述べてきたこと、「超『戦争論』」で吉本隆明氏が見据えているものと、それに対する橋爪大三郎氏の異論が述べられています。

僕は、吉本隆明氏は、社会党を含めた旧態依然とした左翼嫌いから、反核運動に反対していたと思っていましたが、その認識は全くの誤りであったことが、よく解りました。

こんなグローバルな視点から反対なさっていたとは、当時、全く考えてもいませんでした。

第4章「吉本隆明氏と橋爪社会学と」において、吉本隆明氏と面識はないが自分の恩師であるという橋爪大三郎氏が、吉本思想から何を汲み取り、いかに自分の専門の社会学の研究テーマに影響を与えたか述べられています。

最後に「<付録>吉本隆明はメディアである(1986)」において、自分に一番影響を与えた吉本隆明氏を乗り越えようと批判と考察を試みています。


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