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シリーズ格差社会 本当の格差とはなんだろうか?

「勝ち組」「負け組み」なんて言葉が一時マスコミをにぎあわせていたが、現在では“格差”“格差”です。

人間、皆同じ能力があるはずはなく、そういう意味で格差が生じるのは小泉元首相の言うとおり至極、当然の事であって、それが問題だとは思いません。ただセーフティネットは必要ですけれども。

問題なのは単純化して言うと「負け組み」に入ったものが、再び「勝ち組」には入れない事です。
新卒一括採用みたいな学校でいい点、取った者だけしか会社の管理職に這い上がれない会社のシステムや男性と同じ仕事量、同じ質の仕事(出張、残業など)を技術職がしても女性は会社に認められないシステムが問題だと思います。
それにロストジェネレーションという世代は、最初の段階から上に登る梯子を外されたようなものです。
僕もこの世代に入ります。
僕は理系の修士号を持っており、以前務めていた会社で専門分野と違う仕事をしていましたが、明らかに専門学校卒の同僚に知識や技術が負けているという人がいましたが、研究職とは成果主義が取り入れてたり、うちの会社でも能力評価制度が取り入れられており、昇給0円の人が何人かいました(終身雇用が前提の日本の会社で昇給0とは非常にシビアなものです)が、そんな能力主義みたいな会社においても、その専門学校卒の人は昇進は期待できないでしょう。

また、自由競争原理主義がはびこっている今、現在においても、いわゆる「勝ち組」に入った人は、本当に公平な競争の元で勝ち上がったのでしょうか?
また、いわゆる「勝ち組」に入ったとされる一流会社の社員は、ヨーロッパでは考えられないような時間、働いて、それもサービス残業、本当に人生、幸せなのでしょうか?

また、何人もの人が指摘しているように、パート労働者と正社員との賃金面、福祉面(企業福祉を含む)の格差も問題です。
パート労働者として雇われた人は、どんなに能力や努力を払っても正社員のように報われない(これについては大きく方針転換している企業もありますが)。
労働組合と社会党が正社員ばかりの待遇改善を要求してきた責任は非常に大きいです。

また、格差の固定化という問題もあります。
ただ、これについては僕は慎重に考えなければならないと考えています。何人かの識者が重大な問題として指摘するような生まれてきた家族によって子供の将来が決まってしまうのは全くおかしいとは僕は考えません。
僕は、この世に生を授かった者が皆、平等だとは考えません。
戦後日本人は、皆、平等だと思いたがるけれども。

それに反発するにしても受け継ぐにしても、家族の文化的バックボーンのようなものに大きく影響されて生きていかねばならないし、経済的理由で断念しなければならない事もあるでしょう。
ただ、大学生にもなって親の経済的援助を受けなければ進学できないというのは、日本の文化的伝統もあるでしょうが明らかに政治の失策です。

また、生まれついた土地や育った場所にも影響されるでしょう。
ただ、現在の義務教育の事はよく知りませんが、公立学校で学んでいては進学できない現状があるそうですが、それこそが大きな問題でしょう。
ただ、これも僕自身の経験から言わせてもいますが、勉強とは自分でするものだと思います。ただし、その勉強の仕方、方法論は必要だと思います。
実際、英語については従姉妹にみっちり教えられましたが、他の科目については、塾にもほとんど行かず、僕は理系の地方大学に進学することが出来ました。

塾でやり方さえ分かれば、自分で勉強する方がはるかに効率よかったです。
押さえておきたいのは、僕は子供の将来は家族の文化的背景に影響されるものだと主張していますが、外務官僚の家庭に生まれなければ外務官僚になれないや今の自民党のポスト福田候補が2世議員が多いというような世襲制度を支持するものでありません。

大きな問題なのは、“努力と投資を支払ったものが、それに見合う成果が得られない社会のシステム”こそが問題なのです。勿論、能力の問題もあるでしょうが。
しかしながら、大多数の労働者は、当たり前の努力をすれば家族を養える地位と収入を確保出来る社会にすべきです。

その上で、さらに能力があるものたちは、上へと這い上がれるべきです。
私事を言えば、政府は大学院生100万人を政策として打ち出しましたが、修士はまだ就職口はありますが、博士課程については絶望的、博士号を取りながら、フリーターをしている人が大勢いるという現状も明らかに政治の失策です。

実験科学の院生は、はっきり言って労働者です。
論文発表するために日夜、勉強や実験に明け暮れています。指導教官の教育などほとんど受けていないに等しいです。
院生のように高い専門的知識、技術を持ちながら(そのために長年、努力し、人生に投資してきたにもかかわらず)、それに見合った待遇がないというのは日本にとって不幸です。

メジャーリーグへ進出する一流野球選手が登場する以前から、理系研究者はアメリカに進出し、移住してしまっています。
これら頭脳流出は、日本の将来にとって大きな影響を与えるでしょう。

地方と関東圏の格差も問題でしょう。

「希望格差社会」「しのびよるネオ階級社会」、格差社会がマスコミで大きく取り上げられる前から、読んでいましたが、一つの問題提起にはなりましたが、日本社会に“格差”の問題について鋭くメスを入れているとはいえませんでした。

希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く
山田 昌弘
注)幅広い分野にまたがって格差について論じた本で、“格差”を有名にした書。購入の方は画像をクリックしてください。

しのびよるネオ階級社会―“イギリス化”する日本の格差
しのびよるネオ階級社会―“イギリス化”する日本の格差
林 信吾
注)日本の格差について論じている題名のようで、その実、イギリスの労働者階級と中流階級の実態について詳しく書かれた書。非常に興味深いです。

ヒットした「下流社会」なんて、乏しいデータをもとにしたつまらない事を論じたつまらない作品です。

変わらなければならないのは、日本の労働形態です。
僕は民主党が提出している年齢差別撤廃法を支持する一人です。年齢が重大な能力の一つに数えられる日本の企業社会は全くもっておかしいです。
ただ、小沢代表が主張する日本企業を終身雇用制度、年功序列制度に戻そうという動きには反対です。

確かにアメリカの研究者が指摘するように、これらの制度は日本社会のセーフティネットになっていた事実は認めますが、それらがはびこっていた時代においても、はたして個人の公平な自由競争が行われていたかどうかは疑問です。

まず、入り口(新卒採用)が違えば、その後の人生が大きく異なってしまう。
また、日本企業は、これまで家族的経営を良しとし、仕事の質よりも接待等に見られるように人間関係を非常に重視してきた事も事実でしょう。
また、サラリーマンにとっては都合のよい時代でも、一部、研究者、技術者を含むオリジナリティの高い仕事に従事している人達の収入面の低さは、ぬぐいきれないでしょう。

文筆業や僕が好きな映画の分野においても、あれほど世界的名作を創り続けた世界でも珍しい巨匠黒澤明監督ですら、その仕事に見合った収入は得られていないのも事実です。
この事は、徐々に改善しているように見受けられますが、まだまだと思います。
商社員や銀行員はバカ高い給与得ているそうだが、彼らは果たして、それだけ高い能力や努力が要求されるのであろうか?

少子高齢化社会を迎えて、労働人口が少なくなってくる時代がやってきつつあります。
今こそ、日本の労働形態を真剣に考えねばならない時代でしょう。

注)この記事は、小泉首相が現役で小沢一郎が民主党代表に就任した直後、マスコミで「勝ち組、負け組み」という言葉が賑わせている頃に書かれたものです。
少し、古びた感や既にマスコミで取り上げてられているものもありますが、少し違った視点のものもあると思いアップさせてもらいました。

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